社会保険一時金享受の不利益な点

社会保険一時金享受の不利益な点

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う労働市場への影響で失業している労働者数は増加傾向が続いています。失業している労働者は当面の生活費をまかなうために、社会保険一時金享受を選択しがちになります。しかしながら、ベトナム社会保険の勧告により、労働者は社会保険一時金の享受に伴い、以下の五つの重要な権利が喪失します。

1. 社会保険料納付期間への積算

社会保険一時金を享受する労働者はその後の社会保険料納付期間が積算せずにリセットされます。これにより年金に影響を以下のように与えます。

– 年金なしの場合においては労働能力の喪失に伴ってお年寄りの暮らしを支える収入がなくなります。

– 年金ありの場合においてもその後の社会保険料納付期間が短いので年金が少なくなり、お年寄りの暮らしを支える収入を確保できません。

2. 健康保険証および葬祭給付制度の権利

社会保険一時金を享受する労働者は、定年退職後の健康保険証の給付時の権利、万が一死亡した場合における葬祭給付の権利に、以下のような制限があります。

– 年金を享受する労働者は健康保険基金により健康保険証を無償交付される他に健康保険診療制度における権利も享受できます。それに対して、社会保険一時金を享受する労働者はそれらの権利を享受できません。

– 年金を享受する労働者は万が一死亡した場合において、遺族が死亡時点の基礎給の10ケ月分である葬祭給付金を享受すると共に、毎月遺族給付金を享受することができます。

3. 社会保険料納付済額の保留・積立の権利および遺族の権利

社会保険料納付済額は蓄積金として知られ、時間が経てもなくなるということはありません。労働者はその金額を保留することができ、引続き加入する時に積算されます。保留期間においては労働者が万が一死亡したとしても、遺族が葬祭給付金や遺族給付金を享受することができます。

4. 社会保険制度の給付金

社会保険一時金を享受する労働者は社会保険制度の給付金に不利益があります。 具体的に言えば、社会保険料の納付時、社会保険料の算定基礎となる賃金の22%を遺族年金基金へ納付します。すなわち、1年につき、遺族年金基金への納付金額は 社会保険料の算定基礎となる賃金のの2.64ヶ月分になります。

それに対して、社会保険一時金の総額は1年につき、納付年が2014年より前の場合に社会保険料の算定基礎となる賃金の平均額の1.5ケ月分、納付年が2014年以降の場合に社会保険料の算定基礎となる賃金の平均額の2ケ月分とする形で計算されます。

5. 年金受給時の安定生活の確保

社会保険一時金を享受する労働者は、将来年をとったときのために給付された全額を使い切りやすく、それがなくなった場合に社会や子孫の経済状況に依存してしまいます。

それに対して、年金を享受する労働者は定期的に消費動向指数や経済状況に合わせて調整した年金を給付されます。この安定した給付金を持ってお年寄りの安定した暮らしを支えます。

労働者は退職になった時にどの制度どおりに給付金を選択すれば良いか

コロナ禍で失った所得問題の解決策としては、ベトナム社会保険からは、労働者が万が一失業になった場合においても社会保険一時金の享受の代わりに、失業手当や職業訓練受講手当の享受手続を行うまたは政府の社会安生基金の援助制度の申請手続を行えば良いとの勧告を提示しました。